ブックタイトルKomatu Garden Rose Collection 2014-2015

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Komatu Garden Rose Collection 2014-2015

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概要

Komatu Garden Rose Collection 2014-2015

私がまだバラの世界に入っていない学生だった20歳の頃、花材として、咲いたオールドローズを教授が探していました。「私の実家に咲いているので取りに帰ります。」と2時間かけて山梨まで電車で帰り、花を切ってすぐまた東京に戻りました。満員電車の山手線で紙に包まれた紫玉・ロサ・ダマスケナは危うく散りそうになってしまったにもかかわらず、教授は「散り際がバラは美しいの。」とおっしゃって、花びら一枚一枚を大切にアレンジしてくださいました。その時、私へのお礼にとピエール=ジョセフ・ルドゥーテの植物画を見せてくれました。繊細でいて華麗な構図に「美しい」の一言でした。私がルドゥーテと出会ってから20年が経ち、「ルドゥーテの描くバラ図譜を再現する」という仕事を引き受けることになりました。本物の版画が飾られ、薄くなめした子牛の皮に描かれた肉筆画も展示されました。生のバラを鉢ごと運んだ美術館は落ち着いた雰囲気を漂わせていました。私が飾ったのは、お気に入りのロサ・ケンティフォリア・ブラータ。レタスのような葉が特徴的な、ディープカップ咲きのバラです。この品種の版画も飾られているはずだと思い探していると、生花のブラータの壁を隔てた後ろにかかっていました。ある角度から見るとお互いにもたれかかっているかのように見えました。生きているバラよりバラらしいルドゥーテの版画に釘づけになっていたら、「オールドローズを育てている後藤さんですか?」とやさしそうな笑みを浮かべて話しかけてくる紳士が。それから話は弾み、私がルドゥーテのファンであること、オールドローズがいかにすばらしいかなど、私の話をうなずきながらしっかりと聞いてくださいました。それから間もなく私のオールドローズに美しいルドゥーテの版画を転写した絵ラベルをつけることになったのです。バラが私の想いを運んでくれたと感謝しつつ、今日もバラ作りに励んでいます。不可能が可能になったのもオールドローズそのものに存在価値があるからでしょう。何世紀も愛され続けたものたちを、これからも愛し続け、そして伝えていくことの大切さを感じています。KomatsuGarden 7